シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

「大丈夫。大丈夫だからね、芹霞」



玲くんはあたしを落ち着かせるように微笑んだ。



「ありがとう、僕を思い出してくれて」



ぽんぽんと背中を叩いてくれた玲くんは、いつもの通り優しくて。


「久涅の…思い通りにはさせやしないから」



そして櫂を肩に担いで、固い顔のまま。



「きっと久涅は…朱貴と取引したんだ。


恐らく…紫茉ちゃんや小猿くんあたり、毒牙にかけると脅したんだろう。

彼らを守る為に…櫂を引き渡そうとしたんだ」



玲くんが悔しそうな顔をして。



「そうでもしなきゃ、あの中から無事に帰って来れない」



お姉ちゃん…。



姿なき姉に声をかける。



「お願いだから…櫂を追い詰めないで…」



紫堂の警護団が告げた2時間には、まだなってはいなかったけれど。


元よりあたし達に、休息なんて悠長な時間はなかったんだ。


安息な場所などない。



あたしは――


これからを覚悟した。
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