シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「見た処、"魅入られた"元凶は大丈夫だな…」
朱貴は芹霞を見つめた。
「闇属性に免疫があるのか。だから…傍にいた人間に卵を植え付けられた、サンドリオンと巷では呼ばれる蝶に」
七不思議の1つ、サンドリオン。
「蝶…黄色い蝶のことか!!?
黄色い外套男と…何か関係があったのか!!?」
玲の声が響いた。
朱貴はそれに薄く笑って、
「これで僕も貴方達も…監視の手から外れた。
これは反抗の意思の現われとして、
もう…後戻り出来ませんね」
口調を変えることで線を引き、欲しい答えをぼかす。
だが1つ判ることは――
「朱貴…こいつらを助けてくれるのか?」
朗とした小猿の声に、朱貴の顔には笑顔が浮かぶ。
本当に、小猿以外には笑わねえ…判りやすい男だ。
「言っておきますが…翠くんのおかげですからね?」
朱貴は笑みを消した顔で俺達を見渡し、大きな溜息をついた。
「え、翠がどうより…土下座している彼らのおかげじゃ…」
場の空気が読めていないのか、或いは条件反射なのか。
七瀬が驚いた声を出すと、
「黙れ、紫茉」
朱貴が七瀬の頭に拳骨を落とし、呻いた。
「そうだよ、紫茉。俺のおかげなんだから」
「調子に乗って威張るな翠」
今度は、涙目で睨み付けた七瀬が、翠に拳骨だ。
俺…
こいつらの強弱関係が判らねえ。
紫茉<翠<朱貴?
朱貴<紫茉<翠?