シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「ああ、盗聴器まで取ってしまったんですか…」
朱貴が、例の"たこ足"の残骸を見て溜息をついた。
「朱貴、お前知っていたのか!!? ウチにかけられていた盗聴器!!!」
七瀬が目を見開き驚いた声を出すと、朱貴は嘲るように笑った。
「"ありつづける"という事実が、一番安全なものだった。道化師になることこそ、警戒対象から外される為の…一番単純な有効手段だったのに」
「誰に?」
櫂の言葉に、朱貴は答えなかった。
「潮時か…」
そんな呟きが聞こえてきて。
「――…紫堂櫂」
朱貴は真っ直ぐに櫂を見据えた。
「日本屈指の力を持つ五皇は、個々に非常に警戒心が高く、特に私的なことや、彼らの拠点は、外部に知られないように常に警戒を高めている。
その中でも、住まいも家族構成も知られている紅皇は…特殊といえると同時に、それが罷(まか)り通る意味で、それだけ紅皇の大きな力が及んでいるとも言える」
朱貴は…緋狭姉の何処まで知っているのだろう。
「五皇の影がある場所は、絶対的な彼らの領域(テリトリー)。彼らはどんな処でも忍べるが、彼らの領域にはいかなるものであろうと侵入することは出来ない。五皇が…許さぬ限りは」
それは嘲笑うようで。
「紫堂櫂。紅皇を崇めるのは勝手だが、神ではないということだけは覚えておけ。神がかり的な力を持とうとも、人間だ」
櫂は――
そして俺達は――
「人間である限り、"欠陥"もあり、そして必ず"救い"はある。それが見えぬ限りは、不用意に対立などするな。無駄死にするだけだ」
じっと朱貴の言葉を聴いていた。