シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
「人間は…仲間がいれば、強くなれるものだ。歴史に葬られようとした異能力者とて、紫堂として…徒党を組んで大きくなった」


独白のような自嘲気な言葉を。


「五皇とて…例外ではない」


そして。


「攻撃こそが、最大の防御。それは五皇にとっても真理だ」



朱貴は俺達には意味不明な言葉をぶつぶつ呟き、懐から黄色い紙と朱色に染まった筆のようなものを取り出すと、筆のようなもので紙にさらさらと何かを書いた。


ここから見る限りに置いては、怪しげな図形しか書かれていない。


なんというか、子供の落書きみたいだ。


「符呪?」


翠の訝った声が響いて、やはりそれは…小猿達が使う術の一端だと悟る。


「この紙に、俺の奇門遁甲…八門の術の力を込めた。お前達も異能力者であるなら、力を使う際の要領で強く願うだけで…きっと願う場所に続く道が現われるだろう。だが所詮は符呪。持続力がない。八門の世界に取り残されれば、共に消滅する。時と場合を、よく考えて使え」


それは3枚。

櫂の手に渡された。


「それから。

その部屋は俺の領域だ。

桜華が始まる前までだ、自由に使え」


櫂に放り投げられたのは、何かの鍵。

受け取った俺の掌の上では、"第2保健室"という名札がついていて。


「朱貴!!! お前いい奴だ!!! 絶対誰にも開放しないあそこを貸してくれるなん「朱貴~!!! さすが俺の朱貴は、兄上みたいに優しい!!!」


七瀬を押しのけ、小猿が朱貴に抱きついた。


ああ、やっぱり小猿にだけは微笑むんだ、朱貴は。


七瀬なんか、完全無視されているし。


…慣れているようだけれど。

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