シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「…どうして、此処まで? 見逃してくれるだけでもありがたいのに」
芹霞が訊いた。
「嫌なら全て返して貰う」
すると芹霞はふるふると頭を横に振る。
「俺にも…信じたい奴がいる」
それは酷く哀しげな声で。
「お前達にとって紫堂櫂がそんな存在であるように、俺にとってそいつはそんな存在だ。
覚えておけ、紫堂櫂。お前という存在に夢を賭けている者達は、その夢から自らの意志では抜け出せない。お前の行動1つで、お前に賭けられた夢は…現実を剥離させた悪しきものへと代わり、永久に縛り付ける檻となす。
そこからは誰も逃れられないだろう。
――俺達のように」
その真剣な表情の中に、俺達が真意を汲み取る前に――朱貴と桜が体をびくんと反応させて、ある一点を険しく見つめた。
僅差で俺も櫂も玲も、皆気付く。
殺気だ。
「盗聴器を外しているからな。とうとうきたか。この場は…俺が引き受ける」
そして拳を握りしめ、
「開け八つの門!! 急急如律令!!!」
風が…吹いた。
「八門をあけてやる。続く道は…紫堂櫂。お前が願え」
突如割り込んだ、複数の"殺気"が、更に膨れ上がった。
白い服の奴らが雪崩れ込んでくる。
制裁者(アリス)だ!!!