シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
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両手に生暖かいものを感じながら、あたしはぱっちりと目を開けた。
目の前に…
橙色のワンコがいる。
目の前というより、かなり至近距離で…更には同じベッドにいる。
もっと詳しく言えば、あたしが仰向けの煌に馬乗りして、両手で煌の首を絞めていた。
「芹霞~、手ぇはなぜぇ~」
野生的な顔が土色じみて、白目になっている。
「!!!?」
あたしはあらゆる意味で吃驚して、その手を離し…
「な、何で煌が!!?」
煌の身体から飛び退けた。
奴は首を摩りながら上体を起こすと、ぜえぜえと苦しそうな呼吸を繰り返した。
「起こしに来たんだよ…テストなんだろ、今日」
見れば煌は制服姿で。
いつもあたしに起こされてばかりいる男に起こされたから…というよりは、もっと物理的な違和感を感じて、ぐるりと部屋を見渡せば。
ああ、櫂の家か。
「ご、ごめんね、煌。大丈夫?」
悪いのは、完全あたしの方だ。
寝惚けて、煌を襲ってしまったのだ。
煌は何かバツの悪そうな顔つきで、あたしと目を合わせようとしない。
「ごめんね…。まだ痛い?」
あたしの指の赤い痕がついている首筋に、指先をあてて優しく撫でながら、煌の顔を窺い見る。