シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「地下だけで暮らせるだけの設備はあるぜ? サウナ付の2坪のバスルーム、トイレ、キッチンも完備。食料もある。休憩所には最新家電もあるし快適だ。テレビだって最近、3Dの60型になったんだぜ!!? 櫂の家のより大きくなって…」
得意げに自慢を始める煌の横では、芹霞の顔が次第に険しくなってくる。
そして――
芹霞は笑った。
「地上の神崎家は…、
まだアナログ放送のブラウン管テレビで、しかも最近よく映らなくて蹴り飛ばしているくらい古くてね、いつか薄型のいいテレビ買おうと節約して、大きな豚ちゃんの貯金箱に「つもり」貯金でこつこつとお金入れて貯めていたの…煌知っていたよね? うふふふふ。そうだよね、一緒に暮らしているんだし知らないわけないよね?」
――無理矢理に。
煌が、しまったという顔をしたがもう後の祭。
そして玲の顔も引き攣っていて。
少しばかり前を思い出した。
――え? お奨めの最新テレビですか?
玲が…電話でそんなことを話していたような。
そして。
紫堂に請求が回っていた筈だったけれど。
「あんたと緋狭姉だけで何で60型が必要なのよ!!!
キッチンだって、誰が此処で料理するっていうのよ、あんたも緋狭姉も料理しないで食べる専門のくせに!!!
サウナ!!? 汗かいて鍛えている奴が何で必要なのよ!!!
トイレくらい、鍛錬の為に上にしにこい!!!
風呂だって、あんたも緋狭姉も短湯じゃないの、2坪も必要な意味判らない!!!
ああ、電気代や水道代が妙に高かった理由はそれか!!!
も~、何なのよ、無駄に金を使うな馬鹿者!!!」
「ひッ!!?」
煌が顔色を変えて、後退る。
"暮らせるだけの設備"
此処は――緋狭さんの、紅皇の領域(テリトリー)。
緋狭さんの招いた者しか触れられない絶対領域。
判る。
ここには…緋狭さんの結界が幾重にも織り込まれている。
ここは…紅皇の拠点。