シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「何処よ、煌!!! 見てやる、絶対文句言ってやる!!!」
真っ赤になって怒る芹霞を遠坂と玲が宥(なだ)めている。
それでも怒り収まらないらしい芹霞を羽交い締めにしたような状態の2人を引き摺りながら、憤ったままの芹霞は奥へ奥へと進んでいく。
ある意味、緋狭さんの妹だ。
「うわ、うわわわ。芹霞、ねえ芹霞止まって、ねえ…」
玲が止めることが出来ないなんて。
「俺余計なこと言っちまったかも…」
芹霞の剣幕に怯みながら、煌は神妙な顔つきをして項垂れた。
「だけどここの設備がどんなに凄くても、俺使ったことないんだ。勝手に使おうとすれば緋狭姉に怒られるし。どんなに古くても…俺の落ち着ける空間は、地下じゃねえし…」
そして橙色の髪の毛をがしがしと手で掻いている。
それを芹霞に言えばいいものを、本当に不器用な奴だ。
思わず笑みが漏れた時、煌が俺に顔を合わせてきた。
それは、いつになく真剣なもので。
「なあ…櫂」
少し…煌の声が震えていたのは気のせいだろうか。
「俺…何で緋狭姉に拾われたのか、お前知っているか?」
「は?」
それはあまりにも予想外の言葉で。
「8年前。何で俺だけ、緋狭姉に育てられたんだろう? それにさ、制裁者(アリス)の奴らは皆、はっきりとした記憶をもって、俺をBR002と呼ぶのに…俺、判らないんだ。多分…仲間だった奴らなのに。頭に靄がかってさ」
――芹霞ちゃあああん!!!
どくん。