シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

「……」


ごくん。


妙な緊張感を漂わせながら唾を飲み込み、喉仏を上下に動かした煌は…何とも強張った顔つきで。


声すら発せられず、動きを固めてしまう程、煌のダメージは大きいものだったのか。


申し訳ない心地となりながら、せめて痕だけでも早く消えるようにと、至近距離にてごしごしと煌の首筋を触り続けていたら。


「……?」


何故か…局所だけだったはずの赤さが、首全体に拡がってきた。

やばい。


擦りすぎて、内出血が拡がってしまったか。


焦りながら、そろっと上目で煌を見て見れば、煌の顔自体が完熟トマトを通り越した赤さで。


苦しそうな表情を浮かべながら、少し乱れた息遣いをする様に、あたしは煌が怒りを堪えているのだと思い、本能的に遠ざかろうとした。


「……そうじゃねえよ」


煌が、あたしの手を取った。


「自業自得と思いきや…チャンス?」


依然真っ赤な顔のまま――

だけど褐色の瞳には明らかに妖艶な光が宿っていて。


何度か経験していれば、自ずと判る。


やばい。


煌が発情モードに入っている。


「み、見逃して下され」


「逃さねえよ?」


一方的に迸るような色気を放ちながら。


煌はあたしの手を強く引いて、あたしをベッドに押し倒すと、あたしの頭の両横に腕を立て、今にも覆い被さってきそうな態勢で…真上からあたしの顔を覗き込んでくる。
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