シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
真っ直ぐの瞳は、どこまでも熱を孕んで…揺れていて。


それはいつもの可愛いワンコの顔ではなく。


どこまでも艶めいた"男"にしか見えない、ぞくりとする顔で。


あたしは、金縛りにあったように動けなくなる。


余裕ぶったその姿から、目を逸らせなくなる。


「形勢逆転。

俺いい加減――

欲求不満なの。責任取れよ?」


それは櫂によく似た、不敵な笑みで。


橙色の前髪が、あたしの額に掠る。


そんな至近距離で、煌の顔から余裕めいた笑いは徐々に消えて、どこまでも真剣な表情に変わる。


そして苦しげに、褐色の瞳は細められた。


「なあ……」


それは絞り出すような掠れた声で。


「いい加減、こっちを見ろ。

俺だけを…見てくれよ」


心臓が…どくどくいい始める。


あたしの中に居る陽斗(ハルト)が、危険信号を送ってくる。


"流されるなら、覚悟しろ"


何を――?


「お前を…くれよ」


可愛らしさなど何一つない、野獣のような眼差しをして。


煌はあたしの後頭部に手を入れると、傾けた顔を近づけてきて。



そんな時――



ゴオオオオン。



ドラのような凄い音が耳を覆い――


気付けば煌はベッドから転がり落ち、頭を抱えていて。


傍に落ちているのは…



「フライパン?」


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