シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「では後、2分のみ」
そんな緋狭様の言葉に、
「嫌だよ、俺…緋狭姉と対立したくねえよ!!! 緋狭姉はいつだって俺達の味方だろう!!? 嘘でも何でも、緋狭姉に刀を向けたくねえ!!!」
それは我慢しきれぬといった、悲痛な声で。
「――馬鹿犬。いつまで私に甘えている。そろそろ自立をせぬか」
するとふるふると橙色の頭は横に振られて。
「俺、まだまだじゃんか!!! まだまだ緋狭姉に鍛えて貰わねえと…」
「いいことを教えてやろう、煌」
緋狭様は艶然と笑った。
「私は自らの守護石を、例えお前であろうと人には渡さない」
「え? でも壊された…あの増幅力がある腕環に確か…」
「あれも増幅力や遠隔感応能力などあるわけない。
ただの…鉛の錘だ」
「は、はあああ!!?
でもあれのおかげで、今まで俺…火の力を使えたじゃないか!!?」
「私の力がないものを身に付けて、私の力など出るわけないだろう、馬鹿犬めが。あれは全て――お前自身の力だ」
「え、ええええ!!?」
私は――妙に納得した。
非常に腹立たしいことだが、怠け放題の馬鹿蜜柑の潜在能力を思えば、今更どんな凄いことが出来ようが大した驚きにならない。
「"これがあればいつも以上の力が出る"…プラシボー効果。催眠術のようなものだ。まんまとかかりおって」
「そ、そんな…」
「…煌。
つまらんことに、心砕くな。
お前の弱点は、揺れすぎることだ」
その鋭い眼差しに、煌は何かを言いかけて、そして頷くだけに留めた。