シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
或る心象風景5.
此の世で一番の幸福は何か。
そう問われたら――
私はこう答えるだろう。
夢だと気付かない夢を見続けること。
一切の願いを網羅し
どこまでも希望に満ちて。
不可能なことなど何も無い、全能の世界。
"現実"に何より近くて、
遙かに遠く乖離している――
そんな…醒めない夢を見ること。
あの人は笑った。
夢と現(うつつ)は二律背反だと。
背中合わせの関係だと。
ならば――
現の延長上に夢がないのなら。
夢の延長上に現がないのなら。
私は何処までも現実に逆らって
何処までも夢に従順に生きるだけ。
現実なんていらない。
苦痛なんてもういらない。
幸福になりたい。
願い続けるのは、罪ではないはずだ。
私は、永遠に夢に生きよう。
螺旋に続く輪廻の如く――
何処までも何処までも。
至上の幸福を求めて。