シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


「櫂の言葉に…納得出来てねえんだ」


「……?」


「櫂は、心理作戦だって否定したのに…緋狭姉が敵対したのは、俺が仇だからじゃないかって、そう思ってしまったら…」


「……何よそれ。また突拍子もないことを」


煌の思考回路がよく判らない。


飛躍しすぎだ。


緋狭姉が対立したのは、煌の仇だから…ってそれ何?


どうしてそう思ってしまったわけ?


「8年前」


その単語に、あたしは反射的に片目を細めた。


どくん。


まさか――


「俺が制裁者(アリス)だった時さ、緋狭姉の大事な奴を殺ってしまったんじゃねえかって…その不安が消えねえ」


――お父さんッッ!!?


――お母さんッッ!!?



「……。何それ。記憶…でもあるの?」



どくん。



どくん。


煌の原型(オリジナル)である陽斗が騒いでいる。



煌は両手で顔を覆った。



「ねえよ、んなもん。ねえからさ…疑心暗鬼なんだ。今…結束固めて櫂を守らなきゃならねえの、判っているのに…櫂の言葉を信じられねえ俺がいてさ…」


駄目だ。


絶対煌に思い出させては。


そんなこと思い出したら、きっと煌は瓦解する。


煌の精神に、あの真実は強烈すぎる。


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