シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

「そして、更に厄介なのはさ」



煌が顔から手を下ろして、上体を起こし…あたしを覗き込んだ。



「本当に――

緋狭姉"だけ"の仇なのかなって…思っちまう」



やばい。


煌の本能レベルで何か感付いている。



「緋狭姉だけではなく、お前まで…俺、仇だったら…」


あたしは煌に抱きついた。



「あり得ないでしょ、煌!!! 変なこと考えないの!!! 緋狭姉が敵になったのはまだ信じられないけれど、昔のことを今更ぶり返して、恨み晴らすような器の小さなお姉ちゃんじゃない!!!

あんたはお姉ちゃんに愛されているの!!! あたしに愛されているの!!! どうでもいいこと、ぐだぐだ考えないの!!!」


「……本当に?」


体を離すと、頼りなげな褐色の瞳があって。


煌にとって支柱たる緋狭姉の存在が崩れ、その為に大きく揺らいでいるのも、不安がる一因だと思う。


本当に緋狭姉は、何で煌を櫂を…皆をこんな目に遭わすんだろう!!!


皆慕っていたのを、判っていたじゃないか!!!



だけど――。



巡り巡って、悪いのはあたしだ。


やっぱり…櫂の告白を受けてしまったあたしが一番悪い。


そんな事態にさえならなかったら、ここまで状況は悪くなかった。


久涅なんか出てこなかった。


次期当主の教育係に再任したお姉ちゃんが敵に回ることもなかった。


そうしたら皆が傷つくことがなかった。


あたしが、


そうあたしが!!!
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