シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

8年前の、忌まわしい記憶の中にも同じ橙色があった。


煌が煌であるならば、あたしは決して昔を恨まない。


恨む以上に、あたしは煌が好きだから。


それはお姉ちゃんだって同じこと。


間近で見ていた櫂だって同じこと。


信じて欲しい。


煌は恨まれているのではなく、愛されているということ。


それが上手く伝わればいいのだけれど。



だけど、煌を安心させる…いい言葉が思い浮かばないから。



煌の髪の毛の中にある手に、きゅっと力を入れて――あたしから唇を押し付けたんだ。



「…芹霞?」


途端、驚いたように煌が唇を離した。


戸惑うような褐色の瞳。



本当にこいつは。


いつも勝手に1人盛ってくるくせに、あたしの決死の思いに怯みやがって。


男なら――


「!!!?」


黙って受けやがれ!!!



「~~!!!? ん…芹……ちょ!!!」



ぐだぐだ考えずに、今だけを考えろ!!!


完全主導権は逆転し、あたしは受け身の態勢から攻撃の態勢に入る。


煌の上から、噛み付くようなキスをする。


何度も何度も角度を変えて、唇を押し付ける。


判れ、判れ!!!


判って欲しいと思う分の、キスを落とす。


どんなにあたしが煌が好きか。


どんなに皆が煌が好きか。


下らないことで揺らがないで。


いつも通りの、可愛いワンコでいて!!!

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