シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
廊下も電灯が皎々とついていた。
「ねえ…こんな堂々と電気つけていていいのかな。とりあえずここ私立の学校なんだしさ、警備員とか駆け付けてくるんじゃないの? 敵がどうのは置いて考えても」
「ああ、警備員はセキュリティシステムが発動したら、自動的に連絡が行って駆け付けてくるみたいで、この学校には駐在してねえらしい。玲がそれを切って、あいつの力で電気がついているらしいぞ。多分そこら辺は、大丈夫なんじゃねえか?」
「ええ!!? どうして玲くんの力が及ぶの!!? だって街中では全然駄目だったじゃない!!?」
「ん。それは櫂も玲も不思議がって、それを兼ねて、この桜華の電気系統調べるらしい。まあ遠坂の変な虫がいなくなったから、ある程度安心してコトは進められると思うけどな」
こつん、こつん。
廊下に、あたしと煌の足音だけが響き渡る。
「桜華に…敵は潜んでいないのかな」
「何とも言えないが…俺が見渡す限りにおいては、そういう気配は感じねえ。桜も裂岩糸を張り巡らせて、あいつ自身校舎を回ったりして見張りを強化しているし」
「桜ちゃん…大丈夫なの?」
「ああ。何だかあいつの体調ってよく判らないんだよな、俺。ぶっ倒れたと思ったらぴんぴんするし。とにかくまあ、いつも以上に元気だ」
治ったならいいけれど、どうしてもあたしには…"約束の地(カナン)"での衝撃的な場面が思い出されて。
桜ちゃんは、人を助けようとして我が身を犠牲にする子だから、無理に無理を重ねて…手遅れにならなければいいけれど。
本当は、櫂も玲くんも桜ちゃんも…ゆっくり休ませて上げたい。
だけどそんなことを言っている時間もないから。
「今…夜中の2時か」
この時間になると、思い出すのは"丑三つ時"という言葉。
鬼女が髪を振り乱して、襲いかかってくる場面。
魔が通る時だと、櫂が笑って教えてくれた時があるけれど、ああ…もう少し時間をずらせばよかった。
こんな時間にわざわざ歩くのは、気分的によろしくない。