シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
『まあ…そんなので生誕時間も遡れるわけだが、その8月2日…というのは、実は桜華の同級生である佐川春花の後輩、谷中楓っていう女生徒とどんぴしゃりなんだ。以前イチル信仰してた春花が、真似て楓の占いをしようとした時に、見ていた』


そして紫茉ちゃんは、神妙な声を出した。


『嫌な予感がして、春花に連絡して貰ったら…出ないらしい。で、家に電話したら…楓は学校からまだ帰ってこないから、捜索願出してるって母親は言ったらしい』


「どういうこと?」


『今日…ああ、昨日になるか。イケメン塾長が人気の学習塾に、午前授業の帰りに、春花と入会手続きしに行った。春花がイケメン好きの困った奴でな。あたしは休んで魔の手から逃れたんだが…そこで別れてから、消息不明だそうだ。

それとな、実は、イチル亡き後の"CARCOSA(カルコサ)"に載った占星術(ホロスコープ)を持つ者は…』


――そのブログが更新されると、必ず桜華の誰かが殺されているらしい。


――そのホロスコープを持つ女性が殺されてるんじゃないかっていう噂。


「桜華の猟奇事件の犠牲者になるっていう噂、だね。そしてその楓ちゃんって…黒髪お下げの眼鏡女子なんだね?」


『ああ、噂は知っていたか。容貌はお前の言う通り。ほら、中野駅で…上岐先輩が、玲に妙なこと言ってただろう? イチルが取り憑いて殺しているとか。彼女を安心させるのが、櫂の前提条件と翠から聞いた。…何か役に立てないかな』


ありがとう、紫茉ちゃん。


『皇城のコネで…上岐物産令嬢宅割り出し、友達のフリして電話かけてみたら、不在だった。いつ出て行ったのかすら、誰も判らないらしい。親父さんもまだ帰ってきていなかった。落ち着いた応対ぶりがひっかかる。

上岐妙が家から居なくなったのは、初めてじゃない気がするんだ。だとしたら…夜、無意識に外で殺人を犯しているというのも…強(あなが)ち偽りでもないかなって気もする』


そこまで調べてくれてたんだね。


『前に先輩は制服に泥がついていたと言ってたし、楓も制服を着ているなら…桜華自体が無関係とは言い難い。いささか短絡的思考だが、あたしは、桜華で何か起きるような予感がするんだ。お前達、桜華にいるんだろう?』


「何で判るの!!?」

『朱貴が言ってた。蒼生って奴が誘導したからと』
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