シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
煌は声すら上げずに、こてんと横に倒れた。
凄い、一撃で煌がKOされた。
玲くんはやはり桜ちゃん以上の強さなんだ。
「こ、煌? 生きてるよね?」
「ふふふ、大丈夫だよ、芹霞。手加減してあげてるから。そんな発情犬より、僕の処においで?」
両手を拡げて、玲くんは綺麗に微笑む。
若干…背景たる薔薇に、黒薔薇が混ざって見えるけれど。
「僕の方が…もっと優しく起こして上げるのに…」
玲くんはにっこりと笑いながら、あたしの手を引いて抱き寄せると、
「おはよう、芹霞。
今日も可愛いね?」
間近で、玲くんの色気が満開発動した。
朝っぱらから鼻血なんて冗談じゃない。
その思い故に念仏唱えて顔をそむけると、
「ふふふ、逃がして上げないよ?」
そう…耳元で甘い声で囁かれたと同時に、
あたしの耳朶は…湿った音をたてながら玲くんの熱い唇に食まれ、更にはかぷりと歯をたてられた。
「ひゃあ!!!?」
思わず変な声を上げながらしゃがみ込んだあたしに、玲くんは意地悪い笑みを浮かべながら、
「浮気しないでねってメールしたでしょ? お仕置き」
お、お仕置きって何?
何ですか!!?
浮気って…煌とのこと!?
ああ、またあたしは玲くんにからかわれたのだろうか。
真横に、苦しそうな顔で煌が転がっている。
息してるようだし、命には別状は無いだろうけれど…
「さあ芹霞。朝の支度をして、一緒に朝ご飯食べよう?」
「煌が…」
「ん?」
にっこり。
ごめん煌…。
玲くん怖いから――
あんた暫くそこで寝ていて。