シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

・解読 玲Side

 玲Side
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桜華学園 情報処理室。


カタカタキーボードを叩く由香ちゃんの横で、コード変換を試みた僕は首を振る。


「やはり危惧した通り。0と1が狂騒しすぎて、電脳世界に…入れない状況になってる。電気が不安定だから…受入れてくれないんだ、コード変換を」


「……無効化されているということか?」



腕組みをした櫂が、目を細めた。



「そこまではきっぱり拒まれてはいないけれど…近い将来的には何とも言えないな。今みたいに、月長石の備蓄している電磁波に頼る他なくなる。

イメージ的には、電気が…僕の動きに戸惑って、逃げているような感じだな。協力的ではない」


何とも曖昧な言い方だけれど。


電気に心があるのなら、今電気が感じているのは"恐怖"に近い。


まるで敵襲に怯えているような…そういう類のもの。


だとすれば、電気を怯えさせるだけの大きな"モノ"が電脳世界に存在しているのか、電気の計算力を凌駕する…突然的な"何か"が起こったのか。

「とにかくこれはもう、人為的レベルじゃない。僕の力の根幹に関わる…世界の異変だ」


そうとしか言えなくて。


桜華でセキュリティー外しの際に、いつものコード変換に違和感覚えて僕の守護石に頼った。


多くの電力を月長石に溜め込んでいてよかったけれど、今後そればかり利用すれば、いずれ尽きてしまう。


何とかしないといけない。


しかし、これだけ高速なコード変換を試みても追いつかず、逆に変換ERRORの比率が高くなるなら、今まで僕と仲良く協力体制でいた世界に何らかの異変があったとしか言い様がない。


それくらい、僕が日頃利用している世界は繊細で、僕の身近にある。


その世界を他人に語れば、僕は奇異なる眼差しを受けると思う。


櫂達は慣れているから、素直に受入れて貰えるけれど、僕が普通人であったのなら…こんな表現を聞いただけでも精神がおかしいと思うだろう。


それとも、精神がおかしいからこそ、こうした世界を感じられるのか。


時にそう思うこともあるけれど、それは由香ちゃんという普通人のおかげで、僕は"普通"側に…現実側の存在を確認出来ている。


由香ちゃんには紫堂の力はないけれど、限りなく僕側の人間だ。
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