シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「そうだね。じゃあ移動しようか」
僕は由香ちゃんを促した。
「え? え?」
「元より此処は、領域(テリトリー)ではないことを確認しただけさ。領域でアクセス拒否ならば、向こうの策は"完成"されているということになる」
由香ちゃんはぽかんとした顔で僕を見ていて。
「何が敵で何が味方か。悔しいけれど、アイツの呈示したもので判断するしかないのなら、間違いなく…今まで僕達が接してきた電脳世界は、敵側に取り込まれつつある。だけどそれはまだ完全じゃない。
だとすれば…本当に口惜しいけれど、アイツを頼るしかないんだよ」
「アイツって誰さ?」
「氷皇」
代わりに櫂が答えた。
「だから奴は桜華に導いた。
そして、己の領域(テリトリー)をわざわざ俺達に公開したのさ。
自信があるのさ、奴には。
己の領域(テリトリー)を浸食されない自信、まあ…それこそが奴が曲者だという証拠になるだろうがな」
くつくつ、くつくつ。櫂は笑った。
「さあ、行くか。
忌まわしい青色で染まった…
胡散臭い理事長室――に」
僕は頷いた。