シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「しっかしさ~、妙に多い顔文字がムカツクよね~。しかも、何もないといいながら、いかにもありそうっていう顔文字って何だよ!!」
由香ちゃんが叫ぶ。
確かに。
「その矢印の処を見ろと言いたいだけじゃないか」
そしてぶつぶついいながら、由香ちゃんは再度机に潜り、
「ええと、この位置に紙が張ってたんだから、矢印の向きはこうで…」
ああ、なんか氷皇に乗せられるのは嫌だけれど。
「どうだ、遠坂」
黙った由香ちゃんを心配して、櫂が身を屈めながら訊くと、
「溝に隠されてあった。
凄く腹立たしいね…。
あるなら判りやすく机の上に置いとけっていうんだよ!!!」
嫌悪に顔を歪ませ、由香ちゃんが青いノート型パソコンを持って机から出てきた。
きっと僕や櫂の身体の大きさでは、机の下に潜っても頭の向きを変えるだけでも困難で、見逃してしまったかも知れない。
だということは、こんな場所にわざわざ隠すという意地の悪さを考えれば、小柄な由香ちゃんが潜って必ず見つけ出すということを見越していたというのか。
僕達は、氷皇の予測範囲内の存在なのかと思えば、悔しくて仕方が無い。
「何だよこのスペックはさ!!! 小さいのに何でこんなCPU使えるんだよ!!!」
由香ちゃんが怒りながら、パソコンの接続をする。
「これでアクセス拒否されたら、ボクあいつを嘲り笑うからな、思い切り笑ってやるからな!!!」
氷皇が絶対的自信がある領域においても、何らかの外部からの干渉があるというのなら。
確かに氷皇はそれまでの男。
最強を謳っても、上には上が居るということ。
それはそれで…怖いけれど。
緋狭さんも、氷皇を上回る奴も敵になったら。
僕達に未来はない。
氷皇自体、味方だとも思っていないけれど。