シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
「一応…ついたね。ああ、これ…WindowsじゃなくてLinuxか。何で氷皇がLinuxなんて使うんだよ、まったくもう。人と同じでもいいじゃないか!!! …ボクあんまりよく判らないのにさ…」


僕が代わって椅子に座り、キーボードを叩いた。


「なんだい、なんだい。師匠は機械なら何でもOKかい。今度Linuxの組み方、教えてくれよ」


由香ちゃんは食い入るように、僕の打込むコマンドを見ている。


「いいよ。Linuxだろうが何だろうが、基本は1と0。それさえぶれなければ、やることは一緒さ」


そして僕は手を止めた。


「パスワード…聞かれてる」



黒い画面に、白いカーソルが点滅していて。


氷皇の名前とか考えつくあらゆるものを入力してみたが、弾かれる。


「お前のUSBメモリ差込んで、切り抜けられないのか?」


櫂はそう言うけれど。


「紫堂~、ないんだよ、このパソコン。更にマニアックに改造しすぎて、汎用機用に改良していた師匠のものは、型があわないんだ」


メインコンピュータにアクセスさえ出来れば、パスワードなどすぐに解読できるのに。



「くそっ!!!」


僕はキーボードに拳を打ち付けた。


僕が、パスワード如きに辟易するなんて。



その時、櫂が口を開いた。



「氷皇が…お前に言っていたことは何だ?」


氷皇の行動が必然というのなら。


「車を使え、傷つけたら弁償しろ、金振り込め、眼鏡かけて女装しろ。ああ、塔では上岐妙…」


――事件を起こせば?


――レイクン自身で慰めて上げてもいいんだよ? 王子様らしく、体で優しく愛情あげてもね、あはははは~。


僕は唇を噛んだ。
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