シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
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櫂は桜ちゃんを従えて、既に紫堂本家に向かったらしい。
こんな朝早くからご苦労様だ…と思いきや、時間は10時。
11時からの追試の為に、あたしはゆっくり寝かせてくれたらしい。
あたし勉強してないんですけど…と顔を青ざめれば、ダイニングテーブルに櫂の書き置きがあって。
『ここの部分だけ、きっちり覚えていけ』
簡潔に纏められている数式。
櫂…あんた本当に素晴らしい奴だ。
涙出てきたよ。
玲くんの朝食メニューは和食だった。
玲くんの手料理は、いつでも見た目は綺麗だし、食べれば美味しくて仕方が無い。
味付けが絶妙なんだ。
「芹霞、ほっぺにご飯粒ついてる」
この所、大食らいの神崎家の番犬がいないから、手抜きしてパンだけだったあたしは、あまりにがっつきすぎていたらしい。
向いの席から身を乗り出して、玲くんはご飯粒をとってくれた。
「うふふふ。何か新婚さんみたいだね」
そう突如妖しげに微笑んだ玲くんは、あたしと視線を合わせたまま…とったばかりのご飯粒を…挟んだ指ごと艶めかしく口に含んだ。
何だかその動作が淫猥すぎて、更には斜め上から、色欲に満ちたような流し目まで寄越すから、免疫無いあたしは間近であてられ沸騰する。
何で玲くん、ご飯一粒でそんなに色気出せるんだろう。
色気がまるでないあたしとしては、その構造を知りたい。
「3日間…寂しかったよ?」
突然――
玲くんが切なげに鳶色の瞳を細めてそう言った。