シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
・暗闇 煌Side
煌Side
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「こ、煌…ねえ、帰ろうよ。
何もないし何も見えないし、きっと悲鳴も、黒髪お下げの桜華の女生徒も、馬乗りになって殺そうとしてる動きをしているように見えたのも、皆煌の勘違いだよ!!」
おい、芹霞。
俺のような馬鹿でも、それだけ確りした事象が並べば、勘違いなんて納得しねえぞ?
「煌~」
及び腰の芹霞を引き摺りながら、それでも俺は中庭を歩いて行く。
お前、ゾンビ切り抜けてきたろうよ。
ゾンビより怖いか、お前?
お前のうっとりポイントも判らなければ、ぶるぶるポイントも俺判らねえ。
だけど芹霞がどんなにビクついても、1人残していくわけにはいかねえ。
櫂同様、芹霞だって危険な身の上だ。
あの気紛れな黄色い外套男、いつぽっと現われるか判らねえんだし。
「何かあるのだけは間違いねえ。それに…臭わねえか? 俺…視力と嗅覚だけはいいんだ」
目を細めて鼻をひくつかせて見せたら、
「……ワンコ」
「あ?」
「い、いや…」
一体、芹霞が何を言ったのかは判らねえけれど…まず俺の動体視力が捉えたのは、中庭の遙か奥。
俺の嗅覚が捉えたのは…黄幡会の塔で嗅いだ記憶がある甘ったるい臭い。
そして聴覚が捉えたのは女の悲鳴。
視覚、聴覚、嗅覚の…人間の五感覚のうちの半分以上が異常を認めていて、何もありませんでしたなんて結末にはなりゃしねえ。
とにかく不穏な影があったのなら、徹底的排除が…櫂の護衛として培ってきた俺の仕事。
櫂を次期当主に戻すには、どんな不安愁訴も残しておくわけにはいかねえ。
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「こ、煌…ねえ、帰ろうよ。
何もないし何も見えないし、きっと悲鳴も、黒髪お下げの桜華の女生徒も、馬乗りになって殺そうとしてる動きをしているように見えたのも、皆煌の勘違いだよ!!」
おい、芹霞。
俺のような馬鹿でも、それだけ確りした事象が並べば、勘違いなんて納得しねえぞ?
「煌~」
及び腰の芹霞を引き摺りながら、それでも俺は中庭を歩いて行く。
お前、ゾンビ切り抜けてきたろうよ。
ゾンビより怖いか、お前?
お前のうっとりポイントも判らなければ、ぶるぶるポイントも俺判らねえ。
だけど芹霞がどんなにビクついても、1人残していくわけにはいかねえ。
櫂同様、芹霞だって危険な身の上だ。
あの気紛れな黄色い外套男、いつぽっと現われるか判らねえんだし。
「何かあるのだけは間違いねえ。それに…臭わねえか? 俺…視力と嗅覚だけはいいんだ」
目を細めて鼻をひくつかせて見せたら、
「……ワンコ」
「あ?」
「い、いや…」
一体、芹霞が何を言ったのかは判らねえけれど…まず俺の動体視力が捉えたのは、中庭の遙か奥。
俺の嗅覚が捉えたのは…黄幡会の塔で嗅いだ記憶がある甘ったるい臭い。
そして聴覚が捉えたのは女の悲鳴。
視覚、聴覚、嗅覚の…人間の五感覚のうちの半分以上が異常を認めていて、何もありませんでしたなんて結末にはなりゃしねえ。
とにかく不穏な影があったのなら、徹底的排除が…櫂の護衛として培ってきた俺の仕事。
櫂を次期当主に戻すには、どんな不安愁訴も残しておくわけにはいかねえ。