シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

本当は、あいつ…芹霞の傍にいたかったはずだ。


あいつは顔に出さずにいるけれど、孤立無援の状態に相当参っている。


だからこそ、芹霞に傍にいて貰いたいって思っているはずなのに。


あいつ…俺に芹霞を寄越しちまうもんな。


絶対反対の玲を押しのけ、俺と芹霞を2人きりにさせちまうもんな。


俺が芹霞に盛ってたら、お前どうしたよ?


お前…玲並みに嫉妬深くて独占欲強いのにさ。


12年も一途なのにさ。


それでも――


お前のことだ。


元気になって良かったなって、ぽんと俺の肩叩いて笑うんだろう。


お前そういう奴だ。


だから皆、お前を慕っている。


あんな久涅なんて、クソ食らえだ。


誰があんな下卑た笑いをする男に従うよ。



俺達はお前に命賭けるからな?




「あそこだ――!!!」



俺は視界にはっきり捉えた一点を、芹霞に指差した。



芹霞を連れて駆け寄りながら、ピアスを偃月刀に顕現する。


俺の本能は、"危険なもの"と判断した。



今――

俺達の目の前で、下にいる女に馬乗りになって、首を絞めている…黒髪お下げの桜華の女を。


雲間から…月が現われ、視界はより明確になる。


「ねえ煌!!!



あのお下げの人…


上岐妙、エディターだよ、煌!!!」



芹霞が声を震わせた。

< 657 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop