シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
ああ、やっぱりな。
今時こんな田舎臭い女の格好は、多くはいねえだろ。
予想出来ていただけに、驚きは少ねえ。
だけどひっかかるものがあるのは確か。
「やだ、じゃあ本当にイチルに取り憑かれているの!!?」
んなこと知らねえけれど。
殺されそうになっている女見過ごす程、俺は非情には出来てねえ。
俺は駆け出し、馬乗り女の背を足で蹴り飛ばす。
しかし女は突如獣めいた呻き声を出して、俺を振り返るだけで。
対人間用の対応では、生温すぎることを悟った。
剥き出しになった歯。
血走った目。
明らかに狂って壊れたような…人外の存在のようで。
あえて記憶から、近しい言葉を選ぶなら。
「ゾンビ!!?」
芹霞が叫ぶ。
俺が今まで相対してきた"生ける屍"。
確かに芹霞のいう通り、ゾンビのような顔してやがる。
だけど。
目力だけは、生者のモノだ。
屍はどこまでも無、虚ろだったから。
だからこれは違う。
"生ける屍"ではねえ。
じゃあ…何だ?
俺達と同じ…人間なのか?