シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
女が突如地を跳ね…俺に飛びかかってきた。
その獣のような…魔物のような動きに、多少は吃驚した俺だけど、俺だってそれなりに修羅場をくぐり抜けてきてるんだ。
馬乗りになった女の尻を片足で蹴り飛ばせば…女が怒り狂ったような雄叫びを発し…その隙に身を翻らせた俺は、左肘を女の背中に落とす。
生者だし、もしこれが本当に上岐妙なら、櫂の命運握る女だからと…人間の女仕様の攻撃だったけれど、普通はこてりと倒れるはずだったんだけれど…こいつは随分元気みてえで。
まるで効いてねえ。
とりあえずは"普通"じゃねえから、手加減しなくていいらしい。
じゃあ相手をするか。
俺の完全憂さ晴らしに付き合えよ?
そう、舌なめずりをした時。
芹霞が被害者に駆け寄り、その胸を触っているのが見えたから、
「百合!!?」
思わず呟いたら、芹霞から小石が飛んで来て。
ひょいと避けた俺の横を過ぎて、女の頭に石が掠ったんだ。
途端、響くは絶叫。
「な、何、何なの!!?」
石が掠った部分を、大げさな程手で押さえて…喚き始めて。
そこまでのダメージじゃねえぞ?
拳の10分の1くらいの大きさで、更には芹霞には特別な力などねえし。
突然――
「今度は何!!?
地面を両手でばんばん叩き始め、次はがりがりと地面を引っ掻いて。
何かの穴でも掘ろうとしているような奇妙な動きを見せた。
「うがああああああ」
そして両耳を押さえたと思ったら、その手を外して宙にふらつかせ。
右手の人差し指を忙しく動かして、宙に何かを書いているかのような動きを見せた。
何を書いているのかは判らねえけれど、繰り返し繰り返し…同じものをなぞっているのは、どう見ても尋常じゃねえ。