シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「凄く…会いたかった。メールなんかじゃ物足りなかったよ。本当に…君に会いたくてたまらなかったんだ」
吐息交じりの哀しげな声。
端麗な顔に浮かぶ翳りが、冗談だと思えなくて。
「君は、僕に会いたかった? 僕だけに…会いたいと、せめて声だけでも聞きたいと…思ってくれた?」
そうであって欲しいと、懇願されているような錯覚。
あたしはどう反応していいか判らず、ただドギマギするばかりで。
だから、免疫ないんだってば、そういうの。
黙したままのあたしの返答を、玲くんは"否"と取ったらしく、
「そう――…簡単には上手く行かないね」
儚げに笑って、静かに目を伏せた。
「早く君と"お試し"出来れば、何かが変わるのかな。
"約束の地(カナン)"の時みたいに、もっと堂々と宣言して、自覚を促せば…僕を見てくれるのかな。
君さえよければ――
僕は君を離したりしないのに」
見上げられた鳶色の瞳。
いつにない強い光に、目を逸らせなくなる。
惑わせられる。
冗談なのか、本気なのか。
追い詰められている気がする。
いつものように微笑んでくれていたら、ここまでの切迫感は感じなかったろう。
「ねえ、芹霞。
僕が…君を好きだって言ったこと
冗談にとってない?」
さらりと鳶色の髪を揺らしながら、端麗な顔は苦悶に歪む。
そこには一切微笑みがないから――
あたしは、思わず身を強張らせた。
「冗談に…しないで?」
そう、あたしの手を取り――
何かを訴えるように、ぎゅっと握りしめた時。
「俺の時は邪魔しておいて、ざけんじゃねえぞ、玲!!!」
何かが猛速度で飛んできて。
玲くんが軽く顔を傾ければ、元あった彼の頭の位置にフライパンが飛んできた。