シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「素人…ううん、だけどあのゾンビは、素人ともまた違う」
「ゾンビ?」
恒例となってしまったものを思い浮かべる。
「いいや、ゾンビみてえな"生者"だったんだ。あの女、豹変しててよ」
私は目を細める。
「取り憑かれるっていう表現は…ある意味正しいのかもしれねえけど、幽霊がどうのっていう"気"…瘴気みてえのは櫂も玲も…何も感じなかったようだし」
更に目を細める。
「うーん。あれが何だったのか、俺にもよく判らねえ」
「櫂様と玲様が、"何か"を感じないのなら、上岐妙は…狂態を晒したただの女ってことだろうが。だったら結局は、一般人の域を出てないってことだろうが!!!」
煌に怒鳴っても仕方が無いとは思うけれど。
一般人であれば尚更だ。
いつ?
どこから?
私は、糸が切られたということすら、気配で気付くことが出来なくて。
私が作った結界で、私に知られず…何故忍び入ることが出来る!!?
どう考えても、私には…上岐妙に私の技が破られたとは思えなかった。
過去幾度もその顔を見たが、私が気に留める程の…いや、そんな力自体、まるで感じたことはなかったから。
間近で見た、黄幡会での時ですら、私は何故彼女が特別枠の"エディター"などという、肩書きを持ち得るか判らなかったほどだから。
私は彼女に、何一つ特別性を感じなかった。