シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
自己回復したらしい煌は、頭ナデナデ詰るような眼差しを玲くんに向けながら、あたし達のいる居間に大股で入ってくる。


「おはよう、煌。
お目覚めいかが?」


にっこり。


玲くんは何事も無かったかのように微笑み、あたしの手を離した。


玲くん、あたしはいまだ玲くんの真意が見えないよ。


すぐ煌が起きてくると見越して、ちゃんと煌の朝ご飯の支度もしている玲くん。


玲くんは聡くて、いつも先を読む人だから…お馬鹿なあたしは、ただ翻弄されてばかり。


玲くんは優しくて綺麗で強くて、何でもこなせる男性。


櫂と同じ血を引くだけあって、控え目なのに存在感は強烈で。


そんな玲くんが、櫂の幼馴染であるあたしを…と考える方が無理がある。


玲くんには、もっともっと相応しいレベルの高い女の子だって、選取り見取りなのだから。


時間を置けば置くだけ、"約束の地(カナン)"での玲くんの言葉が夢のように思えてくる。だから、からかわれているだけのよう気がしてくるんだ。


1日限定の"お試し"恋人、兼"おでかけ"。

玲くんのGOサインが出ないからまだ決行出来ていないけれど、それが出来ればきっとあたしはまた再認識するだろう。


玲くんに、あたしは如何に釣り合わないかということ。


人の目があれば、きっとあたしは嫌でも自覚するだろう。


そんな寂しい思いをして、玲くんとの仲を拗(こじ)れさせたくない。


だから色恋沙汰抜きで、あたしは純粋に玲くんと遊びたいんだ。


今まで以上に、大好きな玲くんと、もっともっと仲良くなるために。


同時に、玲くんの引き籠もりも解消して、外界に羽ばたいて貰いたいんだ。


玲くんは、この家で…櫂の影で人生を終えて欲しくないから。

< 67 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop