シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
聞いてはいたのだ、玲様から。
七不思議の一環として、上岐妙なる女が黄幡一縷の怨霊にて猟奇事件を引き起こしていると。
しかしそれは、あくまでネタだった。
そう、私達は…彼女の狂言だと思っている。
玲様が彼女を毛嫌いする一因として、恐らく玲様は…無意識なりとも、彼女の中に病的なまでの"狂い"を見ているのだろうと思った。
狂いは狂いを呼ぶから。
玲様は己の狂いの目覚めを恐れ、なお一層彼女を拒もうとしているのではないかと。
そんな女に、私は裂岩糸が破られたとは、信じがたかった。
私は、彼女に特別な力を感じない。
しかし。
彼女を――
私の糸を切り抜けられぬ、ただの一般人だと考えたら。
「妙だな。まさか俺達が来る前から桜華にいて、時間見計らって丑三つ時に猟奇事件起こしたなんてわけでもねえだろ。殺るなら、さっさと殺るよな、普通…」
この馬鹿でさえ、行き着く当然の不自然さ。
切れた裂岩糸。
桜華に居た上岐妙…達2人の女。
それに納得いく…現実的な説明をするというのなら。
「――煌、警戒しろ」
行き着く結論は1つ。
「誰かが…桜華に忍んで居るかもしれない。
少なくとも。
私の裂岩糸の結界を、素手で引き千切ることが出来るくらいの奴が」