シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
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裂岩糸を張り直し、櫂様達の待つ第二保健室に煌と赴いた。
何処ぞの社長室のような豪奢で広い応接間。
今時の私立高校の保健室は、こんな立派なんだろうか。
ワイン色の革張りソファに櫂様は座っていて、向かい側には芹霞さんと遠坂由香が座っており、
玲様は簡易キッチンにて淹れ立ての煎茶と、冷蔵庫の上にある小型レンジで温めたのだろう…七瀬紫茉の作ったほかほかのおにぎりを、テーブルの皿に並べていた処だった。
「ああ、おかえり」
玲様はにっこり微笑みながらも、周囲には常に警戒の目を向けている。
私達は用意された回転椅子に座り、そして視界に入る萌葱色のカーテン奥、玲様の力を感じるその場所に訝った目を向けた。
「ああ、上岐妙だよ。凶暴化が激しいから、僕の電気に感電させて自由を奪っている。もう1人の…被害者は意識戻らないから、そのまま寝かせているけれど」
「玲様。上岐妙が今、猟奇事件を引き起こしたのですか?」
「女の子の悲鳴の導かれ、僕達が中庭に駆け付けた時、既に煌と芹霞がいた。2人が言うには、上岐妙が被害者…楓ちゃんに馬乗りになるようにして、その首を両手で絞めていたらしい。
そして煌が攻撃を加えると上岐妙は突如凶暴化し、頭に石があたった途端あまりに不可解で派手な動作を始めた。僕達が見た時は、宙に何度も何度も指先で何かを書いていて」
櫂様が、テーブルに置かれたの紙を、すっと私達の方に指で押し出した。
「…これを一心不乱に書いていた」
それは記号。
形状的には、ひらがなの「ひ」に似ているが、始点と終点の直線じみた左右の短線が、ぐるりと一回転したような、左右対称の図形だった。
「…これは何だ?」
煌が目を細めた。
「よく判らん。字なのか図形なのか」
何を…表しているのか。