シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
芹霞さんが溜息をついた。


「その他、頭抱えて、穴掘って、耳を押さえたと思ったら、今度はそれを宙に書いて。おまけに櫂が"黄幡一縷"の名を出した途端、櫂を襲ってきたんだよ」


「その異常な行動は、本当に取り憑かれて…いるのでしょうか。イチルに」


私は玲様を見た。



「瘴気は感じないんだ。尋問しても…牙を剥くだけで。ただ奇妙なのは、被害者はみつあみと眼鏡の共通項はない。寧ろそんな容貌なのは…」



ふと、上岐妙の容貌を思い出す。



「被害者共通項の格好をしている女が、共通項にない女を襲ったんだ。


もし仮に。上岐妙にイチルが取り憑いていたとして。七不思議通り、イチルが、生者の肉体を操って、自分を殺した人間の復讐をしていたのだとしたら。


どうしてイチルは、操る器として…上岐妙を選んだんだ?」



確かに奇妙だ。


"黒髪"、"お下げ"、"眼鏡"の特徴を持った女が、イチル殺しの犯人ならば。


どうして上岐妙は対象外としたんだろう。


無理ない時系列に事象を並べれば、殺されたイチルが一番に上岐妙に会わねば、上岐妙がイチルの身体とはなりえない。


噂通り、自分を殺した犯人が、"黒髪"、"お下げ"、"眼鏡以外の特徴を見いだせないため、イチルが無差別にその特徴の女生徒を殺しているというのなら、それ程の憎悪に流されるイチルが、上岐妙だけを例外とした理由が判らない。


何の確信があったのか?

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