シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「違う!!! ありえないッッ!!!」
上岐妙は狂ったように頭を振った。
「そうだよ、櫂。幾ら幽霊だって、成仏できない程殺人犯を恨んでいるならば、相手の顔くらい判っているよ。幽霊、そんな馬鹿じゃないよ?」
「でも現に…此処に居る」
ありえるのか?
殺人犯に取り憑いて、見当違いな復讐をする怨霊など。
あるなら…サイコではない。
コメディーだ。
だけど。
だけど、櫂。
お前…忘れていないか?
僕達は紫堂の力がある。
瘴気を感じ取れる。
お前は…上岐妙から、一縷という人外の存在を感じるのか?
それを見透かしたように、漆黒の瞳がこちらに向いて、何も言うなと静かに頭を横に振る。
そして櫂は――
「誰か、鏡を持っていないか?」
「ああ、ボク…携帯画面が鏡に使える機種だから」
由香ちゃんが、ポケットから携帯を取り出し、銀色の画面にした。
櫂はそれを手にとり――
そして、上岐妙にみせつけた。
「この中に映っているのは…
お前がよく見知った顔だろう?
――…一縷?」