シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
10年前は、天使の櫂の真っ盛り。
櫂が拒否するあの姿の時だ。
可愛かった時の姿だ。
ああ、あの櫂をぎゅうしたくなってくる…。
「…だから嫌なんだよ」
小さい舌打ちが聞え、見ればかなり不機嫌そうで。
「と、とにかくね。あたしと櫂がイチルと会ってたって本当!!?」
何だかおかしい接続詞。
ここは強引に逃げるしかない。
「記憶にないか?
黄色い…ワンピースの女の子。
長い前髪で顔を隠して、黒髪が異様に長かった…」
はて?
10年前の記憶って…。
正直、櫂を巡っての記憶しかあたしにはなく。
櫂あっての過去だから。
「まあ…7歳の記憶だからな」
櫂は苦笑する。
「ごめんね、全然思い出せない。黄色いワンピースの子ね? 一応思い出す努力はしてみる」
「話戻すけど、櫂と芹霞が10年前に会っていたイチルが、今回の黄幡一縷と同一だという根拠は?」
鋭い鳶色の瞳。
「黄色…イチル…。彼女も王になりたがっていたんだ」