シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
――――――――――――――――――――――――――――……

あたしは櫂を探して校舎を走った。


あたしには特別な…超能力なんてものはない。


だから皆の言うような"気"なんて感じ取れない。


きっとそんなものがあれば、すぐに櫂の居場所を察知出来るんだろうけれど…だけどそんなものがない代わりに、あたしは自力で櫂を探し出せるという特技がある。


昔から、櫂を見つけてきた。


何処でどんなことをしていても。


それがあたし達の絆で、それが当然で。


だからどんな櫂の異変でもあたしは気付くことが出来たんだ。


それ故に強まったあたしと櫂の関係。


そして信頼感。


――芹霞ちゃん、大好き。


今は?


今は櫂が何処にいるか見つけられる?


傷ついた顔の玲くんと煌。


あたしの寝ている時に、絶対何かあったんだ。


だけど建物内には誰もいなくて。


櫂は何処にも居なくて。


不安が募る。


――芹霞。


櫂の声が…聞こえる。


それは幻と判っている。


だからこそ意味がある。


無意識領域で櫂を掴め。


櫂が何を思っているか、掴むんだ。


皆があんなに傷ついた顔をして耐えている、その意味を掴むんだ。



――なあ、芹霞。もし俺が…。



ふわりと…櫂の声が聞こえた気がした。


何…?


櫂は何をあたしに訴えようとしているの?



もし櫂が……?



風が頬を掠めた。



あり得ない。


窓が締めきったこの校舎の中で、風など吹くことはない。


風は――櫂の力。


あたしに触れた、櫂の風。


風があたしを呼んでいる。


風があたしを導いている。


風が…感じられる場所に、櫂がいる?


それは何処!!?


風――


屋上!!?


あたしは…屋上に駆け上った。

< 703 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop