シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

――坊は死ななければなりませぬ。



「僅かなりとも希望が残るなら。それしかない。久涅を緋狭さんを…紫堂を敵に回して生き残れるのは」



「櫂様……」


「あの女の…事態が、思った以上に悪すぎた。取り憑いた別意識を祓えばいいなんていう、単純な話ではない。根が深すぎる。その根本を取り除かねば…彼女は惑い続ける。永遠に。彼女からは"不安"は消し去らない。

簡単ではないと…判っていたからこそ、氷皇は示唆したんだ、玲に。俺の為に、嫌っている彼女を…手懐けろと」


俺は目を細めた。


「玲が嫌うのは意味がある。玲はそれにわざと気付かないフリをしているが…彼女は、玲を狂わせるだろう」


「え?」


「属性が同じだ、玲と彼女は。彼女に触発され…そしてやがて玲も気付く。負の心を…」


そして薄く笑った。


「壊したくないんだ、玲を。俺を大切にしてくれる玲の、壊れる姿を…俺は見たくない。

彼女はきっと…玲の負担になる。玲はまた、俺の為に身体を張ろうとし、そして…壊れるだろう」


――あああああああ!!!


俺の中から、玲の絶叫が消えない。


あんな状態で壊れることがなかったのは、奇跡。


それは俺を助けたいという心と…芹霞を想う心故。


だとしたら。


俺を助けられず、芹霞を想えなくなってしまったら?


玲は…破壊される。


修復不可能な程、木っ端微塵に。
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