シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

「ならば!!! ならばこそ!!!」


「桜。これは…万が一の為に、とるべき先行策だ。事態が好転すれば、何も使う必要はない。俺が…負けると決まったわけではない」


桜は、きゅっと唇を噛んだ。


きっと桜は判って居る。



「俺が…誰だと思っている? 身分はなくとも…俺は俺だ」


きっと桜も予感している。


訪れる事態はそんなに甘くないと。


俺の笑い声が虚しく響く。


――芹霞ちゃあああん!!!



「万が一の場合…お前の動きが要だ。お前だけなんだ、動けるのは。玲だけではなく、多分煌も…動けないだろう」


「え……?」


「だから、緋狭さんは…煌の腕環を壊したんだ。だから揺らいでいるだろう、あいつは」


「……」


「相手は五皇だ。簡単に行くとは思うな。全ての事象は一気に俺達に刃をむけてくるはずだ。だから、俺には必要なんだ。賭けのような"切り札"が」


「櫂様は…緋狭様をまだお信じになられているのですか?」


「…俺にとって、緋狭さんは…希望なんだ…」

――まさか死の淵からは、反撃はおろか何1つ出来ますまい。



「徹底だろうな、ああ言うからには…」


俺は、くつくつと嗤った。



「桜が…盾になります。桜が…緋狭様へ攻撃します。櫂様が出来ぬのなら、桜がやります。その為に桜が居ます。櫂様の為に桜がおります」


桜が俺に片膝をつく。


「それは桜だけではなく…玲様も煌も…皆同じ気持ちでしょう。櫂様の為なら、私達は師匠に手を上げます」


それは凛とした決意。


「やめろ。心を痛めるな」


「いいえ、桜はひきません。櫂様は必要なお方。桜が、仲間が…櫂様を危険に晒しません」


何だか…。


涙が出そうになる。


無口の桜が…ここまで強い語気だなど。

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