シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


もしも。

万が一。



どんなに頑張ってみても紫堂を取り戻せないと判った時。


俺に打つ手がなくなった時。


俺から全てがなくなった時。


永遠も、肩書きも…全て失ってしまったら。



その時、お前は――誰の手の中にいる?



お前は――何処に行く?



俺は今まで。


煌や玲にもお前を渡したくなくて。


初恋の相手である久遠にも渡したくなくて。


もがいて、もがいて。


例えお前が、望む反応を返してくれなくても。


もう少し、もう少し。


そう――


未来に期待しながら進んできたんだ。


お前の心を探りながら、他に奪われないように。



それが。


俺と同じ顔の男に、もしもお前が奪われるとなったら。


あっさりとその心を盗られてしまったら。



――発狂する。



同じ顔。


それだけで忌まわしくて。


同じ顔。


だから幾重にも警戒してしまうのか。


同じ造りなのに、突然出てきたあいつは…俺が8年間かけて集めた手札を奪っていく。


どんな抵抗も、俺の力はあいつの前で無に還る。
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