シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「――ねえ、櫂」
芹霞は俺を見つめた。
真っ直ぐに。
「あんた…馬鹿にしてるの? 何そのありえない話」
芹霞は溜息をついて…一蹴した。
吸い込まれそうな…強い光を宿す瞳。
悩み惑う俺を…切り捨てた。
気持ちいいほどに。
「言ったでしょう。離れないって。何であたしが、紫堂の肩書きを必要としているのよ。肩書きを必要としているのはあんたで、それに相応しいから…皆で頑張ろうとしているんじゃない!!!」
――芹霞ちゃあああん!!
「何おかしなこと考えてるのよ、ぐだぐだ。何でそんなに後ろ向きなの、あんた!!! いつも通りどんと構えてどうして頑張ろうと思わないの!!!」
芹霞は俺の胸倉を掴んだ。
「あんたが不安になれば、皆不安になるの!!! 玲くんも煌も桜ちゃんも!!!玲くんに何言ったの!!? 煌に何言ったのよ!!!? 何傷つけることを言ったの!!!?」
傷ついたのか、あいつら?
「それすら気付かないの!!? あんたは、生きているというだけで皆の心の支えなの。それくらい愛されているの!!! もっともっと周りを見なさい!!!」
芹霞は、俺の頬を叩いた。
「いい!!? ぴしっとしなさい!!! 今日が勝負なの!!! 何そんな不安な顔しているのよ!!!? 櫂らしくない!!!」
芹霞の声はもう涙交じりで。
「肩書きなんてあんたのただのオプションでしょ!!? 櫂が櫂であればいいんだから、皆。あたしだって!!! 12年間を信じなさい!!!」
――芹霞ちゃああん!!!
「どんな櫂でもいいよ、櫂さえ生きていれば。櫂がいればそれだけでいい!!!」
そして芹霞は俺に抱きついた。
ああ――
「あんたには肩書きが必要かしれないけど、あたしはそんな肩書き関係ないもの!!! あたしは櫂がいればいいんだもの!!!」
何て愛しいこの温もり。