シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「もしも――
もしも俺が――」
身分が剥奪された後の身の振り方を危惧するのは、それは"幸運"過ぎる結果を経た、もしもの話。
その話題だけで済むのなら、きっと俺は…強気でいられた。
さっきまでのように、不敵に構えられた。
少なくとも、周囲にそう見せることは出来た。
氷皇の呈示した条件をクリアして、その場所に行き着けばいいだけだから、きっと何とか出来ると…そう軽く考えていたんだ。
だけど…気付いてきたから。
上岐妙と黄幡一縷の複雑な関係。同じ瞳を持つ"マスター"。
そして。
"必然"を押し付ける氷皇の膨大な資料は…無関係ではない。
学園長の不正。
黄幡会の信者と金の流れ。
――師匠…これ、高校生の名前と誕生日と顔写真。ねえ…皆のあるよ!!?
――なにこれ…まだあるよ。薬か何かの…実験結果? それから、何だろこの『TIARA』って。何かの生物の…観察日記?
まだある何かのデータ資料。
氷皇が持ち、俺達に見せたことに意義がある。
――ねえ…至る処に…一縷の名前が出ているね。この日付…もう死んでいるはずなのにさ!!! どういうことだろう。
上岐妙と黄幡一縷という存在が、大きく絡みついている。
それがどう絡んでいるかはまだよく判らない。
紫堂の権力が使えないなら、調査にも時間がかかる。
出来るのは、真夜中に"偶然"に起きた事件から考えられる、ただの仮定だけ。
どうしても1つの仮定しか導き出せない。
どんな手段をもってしても、安心させられる"彼女"はいないという仮定。
そして…まだ何か隠されているのだろう。
…簡単じゃなかったんだ。
更には。
時間がなさすぎるのもそう、追手のレベルもそうだが…何より、深く踏み込めば、俺の為に大切な奴らが犠牲になってしまうことに気付いてきたから。
俺が。
皆を守れる最終手段が、"切り札"しかないことに…気付いた。
気付かせられた。
俺は…試されている。
皆をとるか、自分だけの幸せをとるか。
それを占うのもまた、"切り札"だった。