シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
俺は笑って…
芹霞の後頭部に両手を回し…
戦慄(わなな)く芹霞の唇に口付けた。
涙でしょっぱい味がする。
何度も、舌で掬い取っても…
消えない…涙の味。
愛していると伝えたい。
だけどそれは…出来ない。
愛は…全ての動きを縛るから。
俺も…
芹霞も…。
久遠の気持ちが…少しだけ判った気がした。
――成功する確率が完璧に100%ではないですから。
だけど――
育てた想いは大きすぎて。
駄目だと抑えているのに、身体の中で暴れる。
「芹霞…俺……」
離した唇が、震えてくる。
身体の中から想いが出ようとしてくる。
こつんと、軽く触れ合ったままの額。
俺の髪が小刻みに揺れているのが判る。
きっと芹霞も感じてる。
駄目だ。
――芹霞ちゃああん!!
駄目だ。
「俺は――…」
耐えろ。
迷いを…切り捨てろ。
「――!!!」
その時、空から光が降り注いで。
空を仰ぎ見た俺は、眩しい光に目を細める。
太陽が――
上ったのか。
いつもの朝が――
続くのはいつまでなのだろうか。
「生きていたい…」
誰にも聞こえない、それは俺の独白。
この太陽の下、芹霞の笑顔を見ていたい。
隣に、笑って立っていたい。
永遠に――。