シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
櫂は笑ったんだ。
――全ては"必然"、だ。
最悪の場合と前置きしていながら、あいつは自らその"切り札"で攻め込もうとしている。
――此の世で最大の防御は…最大の"攻撃だ"。
――それ以外では、緋狭さんに立ち向かえない。
櫂の中での緋狭姉の存在は、消えてねえ。
敵になりました、はいそうですかと…納得出来るような、そんな軽い関係じゃねえんだ。
俺だって同じ。
玲だって桜だって。
皆、緋狭姉に救われ…人生を変えられて来た者達だから。
出来るなら。
可能な限り。
緋狭姉と相対した場面に遭遇したくねえ。
心が痛すぎる。
心底信頼していた緋狭姉が…どうして敵になってしまうのか。
だから思わずにはいられないんだ。
俺が…緋狭姉の、仇だから?
どうしても不安は消えねえ。
芹霞が居ても、櫂が居ても。
例え不安の火は消えても、燻りは残る。
こんな状態で。
櫂も玲もこんな状態で。
俺は…何が出来るというのか。