シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「師匠…」
遠坂が八の字眉だ。
こいつも櫂からの話を聞いている。
何も言えねえらしい。
深く傷ついた玲の顔。
判るけどさ。
よく判るよ。
俺も同じ思いだ。
桜だってそうだろう。
櫂を追い詰めたのは、俺達の不甲斐なさだ。
俺達が確り櫂を守れれば、こんな事態にはならなかったはずだ。
相手の力も、権力も、奸計も…全ては俺達の知らぬ間に準備がされていて、その中で踊らされている俺達は――
滑稽な道化師以外の何物でもない。
――全ては"必然"、だ。
もっと、絶対いい案があるはずだ。
――それ以外では、緋狭さんに立ち向かえない。
少なくとも…桜華に来るまでは、櫂にも戦意があったんだ。
今回、芹霞の身の上も問題になっているから…芹霞を久涅に渡さない為には、何が何でも氷皇の言ったゲームに勝たなければならなくて。
だから櫂は、芹霞の為に何が何でも勝たなくてはならなくて。
だからこそ、緋狭姉との敵対も受容した様子だったのに。
あの女…そう、上岐妙だか一縷だか訳判らねえ女の話を聞いてから、櫂に変化が起こったんだ。
焦りと…絶望。
訳が判らない俺には、そこまでの感想にすら至っていなかったけれど、櫂は…かなり深刻に受け止めていたようだ。
何のどんな部分で何を考えたか、俺にはさっぱり。
そして言ったんだ。
決意めいた顔で。
切り札のこと。