シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


「まずは横須賀への移動手段だけれど…このままでいけば、私鉄から何から交通手段は…遮断される。そして朱貴から貰った符呪だけれど…一度、久涅と緋狭さんの前でそれを見せてしまっている。彼らが手を打たないはずはない」


ばっさり。


「だとしたら、逆に人数を分散させて櫂の守りを薄くしている方が危険だ。もしも"安心"させられない時。どうしてもその手段が見つからない時は。僕だけを別行動させて欲しい。僕を残して…皆で櫂を守れ。緋狭さんと久涅の手から」


「何でだ? お前の方が俺より強いだろう?」


「煌。僕にも"切り札"がある。僕だけが、別ルートで"安心"させられる…可能性が高い。100%とまでは言えないけれど」


玲の切り札とは何だろう?


「そう言えば氷皇もお前に何か言ったよな。なあ? それがあるなら、とっとと"安心"させればいいんじゃね?」


「すまない…。これは僕の…矜持の問題なんだ。割り切れない僕がいて…だけど大丈夫。もしもの時は、ちゃんと僕は動くから」


仮面のような微笑みを向けてくる玲。


何でそんな辛そうなんだ?


「そうならない事態を…願うよ。どんなに難しくても、正攻法でいきたい」


そして。


睨みつけるような玲の目線の先には、あの女。


「なあ…どうするよ、あいつ…」


俺は、ソファの上で寝かせているあの女を親指で示す。


「結局一体全体、上岐妙と黄幡一縷の関係は何だったんだい? 紫堂は何に気付いたんだ?」


俺が判るはずねえだろ。


やはり遠坂は、すぐ玲に訊いた。



「恐らくだけれど…一縷は存在しない」



それは固い顔で。
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