シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
――一縷を殺したのは、上岐妙だな?
「は? ってまあ…殺されたからそうだよな」
「ある意味正解で、ある意味不正解だ。
一縷は…数年以上前に…死んでいる」
玲はそう言った。
「は!!? 何でそんな前!!? おかしいじゃねえか」
「だから…"時系列が違う"んだよ」
玲は目を細めて。
「元々、桜華に黄幡一縷は存在していなかった。元々、黄幡会に、黄幡一縷は存在していなかった。櫂は…それに思い当たったんだ」
静かな口調だった。
判らねえ。
さっぱりだ。
「存在してねえったって、一縷はカリスマ教祖だろうが!!! 現に桜華の3年で通学していて、昨年のミスコンだったんだろ!!?」
「証拠がない」
「はあ!!?」
「……師匠。一縷像が、ネット界でもあやふやな情報しかないのは…実体を誰もみていなかったからだと…そう言いたいんだね?」
「何だ、それ!!!?」
声を荒げているのは俺だけで。
「死んだんだろうが!!! ちゃんと屍体があがったから、猟奇事件の犯人は一縷の幽霊だって言われている程で…!!!」
「煌…。一縷の屍体だと言われた決め手は…ミスコンで優勝者に贈られるという…『星冠(ティアラ)』さ。それは毎年違うものだから、その『星冠(ティアラ)』は一縷の時のものだと…だから一縷だと断定されたんだと思う」
「待て待て待て!!! つまりはミスコン時にはいたんだろう、一縷が!!!」
玲は微笑んだ。
「ミスコンは…投票制だ。実体のない"カリスマ"が、ミスコンに優勝した。元々一縷は、"写真嫌い"という設定で、更には妖しげな力があるということで、誰もが恐れて隠し撮りも出来ていない状況。
群集心理だ、恐らく。見えないものが、1つの形に固められ、究極の美少女までに持ち上がったんだ」