シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「それは…意識レベルのもの? 肉体レベルのもの? 意識レベルのものなら、殺された一縷の私怨に上岐妙が操られた…意識を乗っ取られたとでもいえばいいのかな、そういうことだよね。まあ鏡見た反応を見れば、一縷は誰に取り憑いていたのか判らなかったみたいだけれどさ。
それでもまだ…真実"殺された"のがかなり昔だというのなら、あまりにもタイムラグがありすぎて、何で今その復讐劇が起きているのかさっぱりだ。ここ数年の"イチル様"が全て皆の妄想だというのなら、復讐の起源は昔に遡るわけなんだから。
この場合、はっきりしていることは…あの女(ヒト)の肉体は上岐妙のものだということだけだね。一縷は死んでいるんだから。だけどそうなると…何で"イチル様"しか判らない情報を持っていたんだろう? 上岐妙がイチル様のわけないよね、だって…上岐妙は確実に此の世に存在し、しかも小猿くんが目撃したように…いじめられていたんだからさ。そればっかりは群衆心理でも妄想でもないだろ」
確かにそうだ。
「肉体レベルのものならさ。死んだはずの肉体が生きていたという時点で、それはもう心理がどうのの話じゃない」
死んだ人間が生きているなんて、まるでそれは…。
「ゾンビ。そう・・"生ける屍"だということじゃないか」
そう、また…それだ。
「仮にそうだとしたら問題はまだあるね。どうして肉体とは無関係なはずの、上岐妙という別の意識が混ざり合えるのか。
一縷の憎悪を語った上岐妙ってう存在自体が、あやふやだ。何で"取り憑かれた"状態になるんだろう。何より、今度は上岐妙というものが、実際はないのに、目撃されていたということになる。じゃあ上岐物産ご令嬢の上岐妙は…一体何だったというのか。それこそ、"取り憑いて"いるのか? 一縷に」
暫く、遠坂と玲は見つめ合っていた。
「そこまで考えているとは…優秀だね、由香ちゃん」
玲はにっこりと微笑んだ。
「んー、あの変なの取られたら…頭がすっきりしたみたい。それまで何かもやもやしてたんだけれどさ」
もやもや…。
そんなの俺なんかしょっちゅうだ。
今何て特にそうだ。
胸までむかむかしてる。