シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「ははは。何が取り出されたのか、はっきり見てなくて正解だったね」
そう笑ってから、玲は続けた。
「ねえ、由香ちゃん。話戻すけれど…それは殺された幽霊が"取り憑いた"という条件が必須だよね」
玲は、何が言いたいのか。
遠坂は何かを感じたようだ。
「だけど師匠、取り憑いてないという前提で話を見れば…物理的な、肉体的レベルの問題に突き当たるじゃないか。
更に。何の為に猟奇殺人が起きていると? 何で上岐妙が一縷の憎悪を感じ取れて恐怖していると? 第一2つの意識が存在出来ていること自体、おかしいじゃないか」
「殺人の動機はまだ判らないけれど、"一縷は上岐妙に殺されている"、"今見ているのは一縷だ"の櫂が言った条件をクリアするとすれば…あの肉体は上岐妙であり…同時に一縷のもの。彼女達は…1つの肉体を共有している…そう考えた方が無難だ。なあ…煌」
玲は突如俺に話を振り。
「お前は…あの子から、瘴気を感じたか?」
俺は首を横に振る。
殺人を犯す怨霊が憑いているはずなのに、何も感じ取れない。
「多分、それが…僕達が瘴気を感じない理由だ」
だとしたら――
同じ肉体に…2つの意識?
「自作自演は!!? 狂言とかは!!?」
「だったら…良かったんだけれどね」
玲は哀しげに笑って、俺の言葉を却下した。
「一縷のものであり上岐妙のもの…そりゃあ解答は簡単かも知れないけれど、ありえないでしょう。1つの肉体に2つの意識なんて。しかも鏡見た一縷の反応では、肉体がどんなものかも意識してなかったみたいだし。紫堂や神崎が昔会った時から、そんな状態だというのか?」
「櫂は一縷だけしか特定出来ていないように感じる。ありえないといったけど、記憶の外貌的特徴から行けば、肉体の持ち主は…櫂達が会った一縷なんだろう。時系列を無視した形だけどね」
「師匠、だったら、いつから上岐妙が出現したんだ? 大体本来優性意識である一縷が何で、劣性意識の上岐妙に"虐められて"、更に"殺された"記憶を持った!!? しかも桜華で実際に虐められていたのだとしたら、上岐妙が優性意識であったことになるじゃないか。何でそんな逆転現象が起きているんだ?」