シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
コメカミから、汗流れているぞ、玲。
多分、その可能性を思ったんだろう。
「それは…まだ今の段階では何とも言えない…よ?」
否定したいんだな、玲。
俺だって、そうだよ。
今は、櫂が優先事項なんだ!!!
「何せ…氷皇がどうしても一縷に近づけさせたいのなら、一筋縄ではいかないだろうことは明白だけれどね。どんなことでも、きっと…必然であることは間違いないけど…」
ぶつぶつぶつぶつ、独り言を言ってから、大きな溜息をついて、天井仰ぎ見る。
「上岐妙は厄介だ、予感通り。ただ取り憑かれていたたけの存在であったら、殺人も一応の理由がついた。だが、取り憑かれていないとなれば…上岐妙は…"何か"によって動かされていることになる」
喉元から、"むかむか"が押し上げ、"もやもや"が音を鳴らした。
「何によって何を動かされているのか。他に…何か隠されているのか。そこまで深入り…しないといけない…か」
苦渋の顔から、玲はそれが嫌なんだと言うことが判った。
「一縷の意識が何処から何処までのものか確かめるにも、上岐妙の意識に触れないといけないだろうし。一々…彼女の意識に触れるのか、これから」
「なあ玲。あの女の本体が一縷だとしたら。同在する上岐妙の意識は何だと言うんだ? その必要性が判らねえよ、やっぱり。上岐妙の意識が、一縷の意識を苦しめるだけのものなら、上岐妙の存在は…あってはならない、狂気みてえなもんじゃねえか。そんな狂気を"安心"させて…何が得られる?」
端麗な顔は…俺の言葉を受けて急遽翳った。
「そうだよね…。
狂気は…狂気しか呼ばない…ね」
そして苦しそうに目を閉じる。
「狂気は…伝染する」
そして、鳶色の瞳は俺を見た。
「煌…。
この先で最悪…
もしも僕が狂ったら」
少し、怯えたように目を細めて。
「……また、あんな見苦しい姿晒す前に…
――殺ってくれ」