シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

「大丈夫。糸は…有効だ」


まだ、内には"不穏なもの"は流れ込んではいない。



しかし…


糸は私に、極度の緊張感を伝え…微かに震えさざめいた。


外から溢れる瘴気が…糸から伝わる。


つまり…結界も、時間の問題ということ。


氷皇と朱貴の結界力も…本人が不在であるならばどの程度有効かも判らない。


私達が全力で結界を強くしたとしても、籠城が目的ではないのだ。


私達は、何れ早い時間に此処を出ねばならない。



その時踏み込む外界は――


どうなっているんだ?



「!!!?」



そして――


私は人の声を聞いたんだ。



くぐもった…苦悶を訴える女の細い声。


ぐひぐひと獣じみた歓喜の男の声。



1つ2つのものではない。



「何!!?」



振り返った私が見たもの。



それは…校舎の窓に張り付く――



「桜、大丈夫か!!!?」



「玲様…」



血塗られた…屍。


光を遮る、夥(おびただ)しい…死者の群れ。


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